NMNが卵子の質(老化)を回復させ妊娠力を高める

2020.3.22

NMNが加齢に伴う卵子の質と妊孕力を顕著に向上させる研究結果

 

女性の加齢による妊孕力(にんよう力:妊娠できる能力)の低下の主な原因は、“卵子の質の低下”と言われています。妊孕力は、20歳代前半がピークで、20代後半から徐々に衰え始め、30代後半で急速に低下します。

 

卵子の元になる卵母細胞は、女児がまだ母体内にいる胎生5ヶ月頃に最も多く、約700万個作られますが、生まれる頃には100~200万個になり、初潮を迎える頃には30万個、妊娠できる時期には10~30万個まで減少します。37~38歳で2万5千個以下になると卵胞数減少の加速期に入り、その後の十数年で1000個以下となり、50歳前後で閉経を迎えます。

精子と異なり、卵子は女性の生涯の間に新しく作られることは決してありません。

 

30代後半になってもまだ数万個もあるのかと思うのは、早合点です。

卵胞は、毎月1つずつ発育するのではなく、1000個位が月経と関係なく育ちはじめ、80日ほどかけて成熟してきたもののうち、月経周期と一致する都合のよい大きさの卵胞が1個だけ選ばれて排卵し、残りは閉鎖卵胞となり消滅していきます。すなわち、卵子は毎日30~40個、1か月で1000個ずつなくなっていきます。

 

このように、加齢に伴い数が減っていくことに加え、排卵されるまでの非常に長い期間、卵巣内で様々なストレスにさらされ続け、いわゆる”卵子の質の低下”が起こると考えられています。

妊孕力が、母体の年齢ではなく、卵子の質によるところが大きいとされる理由の裏付けとして、年齢の若い女性から卵子提供(ドナー)を受けると、加齢に伴う妊娠率・生産率の低下は見られなくなることが挙げられます。

 

下のグラフは、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が、2020年に発表した「ART(生殖補助医療)生産率」です。

患者自身の卵子を用いた場合(オレンジ色)と若年女性からの提供(ドナー)卵子を用いた場合(紫色)が示す生産率からもわかるとおり、患者自身の卵子を用いた場合は、年齢の増加に伴い生産率は低下しますが、ドナー卵子を用いた場合は、年齢による生産率の低下は認められません。

加齢にともなう妊娠力の低下は卵子の質に問題がある

出典: CDC, 2015, Percentage of Embryo Transfers That Resulted in Live-Birth Delivery, CDC,https://www.cdc.gov/art/reports/2020/summary.html.

 

 

「卵子の質」とは、具体的には、以下のようなことがあげられます。

〇 卵子の減数分裂の異常( 染色体異常の卵子が増える)

〇 卵子細胞質でのミトコンドリア機能低下( エネルギー産生が低下し発育不良に)

〇 細胞内の酸化ストレスの増加(活性酸素の増加)

〇 染色体末端のテロメアが短縮する(細胞分裂が停止)

 

 

加齢に伴い卵子の質の低下が起きていることは様々な事実から明らかですが、卵子が老化する詳細なメカニズムについては、現在のところまだわかっておらず、「卵子の質」の改善を試みることは非常に難しいとされています。

 

 

そんな中、一筋の光明となる研究結果が発表されました。

 

オーストラリアのシドニー大学とクイーンズランド大学の科学者、そして老化研究の権威であるハーバード大学のデビッド・A・シンクレアらは、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD+)レベルを上昇させることで、加齢による女性の生殖能力を回復・維持する有効かつ非侵襲的な方法を提供できる可能性を実証しました。

 

実験のポイントは、

  1. 加齢に伴い卵母細胞でNAD+が減少し、不妊や卵母細胞の質の低下に寄与しているのか
  2. NAD+前駆体のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)による治療によってこれを回復させることができるのかどうか

というものです。

 

実験は、ヒトと同様、卵子欠損により生後8ヶ月頃から生殖能力が低下し始めるマウスにNMNの入った飲用水を4週間にわたって摂取させる方法で行われました。

老化したマウスの卵母細胞では、若いマウス(4〜5週齢)と比較してNAD(P)H(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸:還元反応を触媒するのに用いられる補酵素)レベルが低下し、NMNの摂取により老化したマウスの卵母細胞でNAD(P)Hレベルが上昇することがわかり、また、この傾向が卵母細胞だけでなく、卵巣組織全体にも関与していることが明らかになりました。

 

実験では、NMNの投与(経口)により、以下の結果なども得られています。

〇 正常な染色体をもつ卵母細胞の割合が著しく向上

〇 高脂肪食を5~6カ月間与えた肥満動物の卵子収量を増加させる

※肥満は不妊症やNAD+レベルの低下をもたらす生理学的課題を抱えている。

〇 内細胞塊の大きさが改善され、NMNの投与期間が長いほど、より顕著に改善される

〇 初期胚(胚盤胞)の細胞数が改善され、体外受精後の着床が成功する

 

 

研究者たちは、

“These findings suggest that late-life restoration of NAD+ levels represents an opportunity to rescue female reproductive function in mammals.”

(これらの結果は、晩年期におけるNAD+レベルの回復が、哺乳類における女性の生殖能力を救済する機会を与えることを示唆しています)

と締めくくっています。

 

論文のフルバージョン(英語)は、下記からご覧いただけます。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211124720300838

 

 

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