NMNは視床下部において低下したNAD+レベルを回復させる
2023.1.26
ワシントン大学の今井教授らの研究チームにより、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)またはNAD+合成酵素NAMPTを含むeNamptを高齢マウスに投与すると、視床下部の領域でNAD+レベルが増加することが明らかにされました。
NAD+は加齢とともに減少し、特に記憶を司る海馬での枯渇は、認知障害と関連していると言われていますが、これまでの研究では、視床下部などの脳領域において、NAD+が減少するかどうかについては、ほとんど分かっていませんでした。
npj aging誌に掲載された今回の研究では、ワシントン大学の今井教授らの研究チームが新たに確立したメソッド(※)を用いて、若齢および高齢のマウスで視床下部のNAD+レベルを正確に測定することに成功。
※レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、小さな組織サンプルでNAD+レベルを正確に測定する新しいコンビネーター方式
今井教授らは、このメソッドを用いて、視床下部核における局所的なNAD+の変化を調べたところ、22ヶ月齢のマウスでは3ヶ月齢のマウスと比較して、4つの小領域のうち3つでNAD+レベルが有意に低下することが明らかになったとしています。
“We were able to establish a new combinatorial methodology, using laser-captured microdissection (LCM) and high-performance liquid chromatography (HPLC), to accurately measure NAD+ levels in small tissue samples. We applied this methodology to examine local NAD+ changes in hypothalamic nuclei and found that NAD+ levels were decreased significantly in the arcuate nucleus (ARC), ventromedial hypothalamus (VMH), and lateral hypothalamus (LH), but not in the dorsomedial hypothalamus (DMH) of 22-month-old mice, compared to those of 3-month-old mice.”((Imai et al., 2023 | NPJ Aging) NMN attenuates falling NAD+ levels in four subregions of the hypothalamus.)
そこで、22カ月齢の高齢マウスに300 mg/kgのNMNを1回注射すると、減少が認められていた3つの領域すべてでNAD+レベルが回復することがわかり、次いで、NMNは高齢マウスの視床下部におけるNAD+レベルの低下を抑制することが明らかになったとしています。
さらには、若齢マウスから抽出したニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ含有細胞外小胞(eNampt-EV)を、高齢マウスに投与したところ、視床下部のARCとDMHの領域において、NAD+レベルが有意に高くなることが分かりました。これらの結果は、加齢に伴う視床下部におけるNAD+調節の特異性を明らかにしており、今後行われる、視床下部におけるNAD+の減少が及ぼす影響についての研究に期待が高まっています。
【出典】
Johnson, S., Yoshioka, K., Brace, C.S. et al. Quantification of localized NAD+ changes reveals unique specificity of NAD+ regulation in the hypothalamus. npj Aging 9, 1 (2023). https://doi.org/10.1038/s41514-023-00098-1
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NMN摂取による入眠潜時と睡眠の深さに関しての最新研究を発表(ヒト臨床)
2023.1.10
中国・南方科技大学のZhao教授らは、NMNを摂取することで、睡眠が改善されることを実証し、American Journal of Translational Medicine誌に発表しました。
Zhao教授らにより、45歳から75歳までの58人を対象にNMNと睡眠の質の関係性を調べる研究が行われました。対象者は、NMNを摂取する29人の群と摂取をしない29人の群に分けて行われ、調査は、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)とスマートバンド(Huawei Band 6)の睡眠データを用いて評価されました。12週間後の夜間の目覚めや落ち着かなさなど睡眠に関するPSQIの回答によると、NMNを摂取した中高年者は、NMNを摂取しなかった者と比較して、睡眠の質が向上し、入眠潜時(入眠までにかかる時間)も顕著に減少したと回答。また、(手首に装着する)スマートバンドの解析結果によると、レム睡眠とノンレム睡眠の両方を促進することが判明したとしています。
レム睡眠とノンレム睡眠の時間は年齢とともに減少し、60歳を過ぎると最も深い眠りの段階(N3)も消失すると言われています。睡眠は免疫、認知、代謝機能に重要であり、加齢による睡眠の質の低下は、加齢に伴う多くの疾患の原因となる可能性があります。
これまでの研究で、サーチュインは概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に重要な役割を担っていることが分かっており、加齢に伴うNAD+レベルの低下は、ヒトの概日リズムにマイナスの影響を与え、睡眠障害を引き起こす可能性があるとしています。これは、NMN摂取によるNAD+が補填されることで、睡眠パターンが改善する裏付けとなり、中高年者のNMN摂取による睡眠の質の向上は、健康長寿の実現も示唆しているとも言えるでしょう。
【出典】
ZHAO, B., Liu, C., Qiang, L., Liu, J., Qiu, Z., Zhang, Z., Zhang, J., Li, Y., & Zhang, M. (2022). Clinical observation of the effect of nicotinamide mononucleotide on the improvement of insomnia in middle-aged and old adults. American Journal of Translational Medicine, 6(4), 167–176.
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兵庫医大NMN注射が血中脂質量を減少させることを示唆する研究結果を発表
2022.9.13
これまでにNMNの経口投与は安全性が実証されていますが、静脈内注射の安全性は未だ確認されておらず、日本国内のいくつかのクリニックでNMNの静脈内投与による臨床が推し進められているところです。NMNを直接血管内に投与すると、体の中心的な解毒器官である肝臓を経由しし、肝臓でろ過されなければ、NMNは心臓や膵臓、腎臓に障害を与える可能性があると懸念されていました。
この度、兵庫医科大学の後藤教授らは、NMNを注射した場合においても、安全に代謝され、中性脂肪(トリグリセライド)濃度が大幅に低下することを、Cureus誌に発表しました。
さらに、NMNの血管内投与により、長寿を促進する分子であるNAD+の血中濃度が約20%も上昇することが判明。NMNの経口摂取では、NMNが血中トリグリセリドレベルを低下させることは知見されていなかったが、血管内投与においても、NMNは安全に代謝され、中性脂肪レベルを低下させるのに役立つ可能性があることを示したとしている。中性脂肪の上昇は、脂肪肝疾患やII型糖尿病と関連しているため、NMN注射は、これらの加齢に伴う疾患に対抗する方法になり得ることが期待されます。
後藤教授らの研究チームは、“NMNを静脈内投与した場合、中性脂肪値を下げるなど、経口摂取はない利点が得られる可能性があり、今後の研究では、NMNの静脈内注射が、筋肉の衰え、インスリン不感症、皮膚などの臓器におけるNAD+レベルの低下など、加齢に関連する状態にどのように影響するかを調べる必要がある。さらに、NMN注射の効果は、より長い期間にわたって測定していく必要があります。”としています。
【出典】
Kimura S, Ichikawa M, Sugawara S, et al. (September 05, 2022) Nicotinamide Mononucleotide Is Safely Metabolized and Significantly Reduces Blood Triglyceride Levels in Healthy Individuals. Cureus 14(9): e28812. doi:10.7759/cureus.28812
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