NMNはヒト初代細胞培養におけるポリ誘発炎症反応を緩和する

2023.8.3

高齢者は若年者よりもウイルス感染に対してより感受性が高く、ウイルス感染による死亡率も高いとされています。

細胞はウイルスと戦うためにエネルギーが必要ですが、加齢とともにNAD+というエネルギー生産に関わる物質が減少することが、ウイルスへの抵抗力が弱まる原因と考えられています。

 

日本のSBXバイオサイエンスの科学者たちは、NAD+を増やす効果を持つ物質であるNMNが細胞の抗ウイルス防御にどのような影響を与えるかについて研究を行いました。

 

その結果、NMNは人工的に感染させたヒト細胞において、炎症を引き起こすIL-6というタンパク質の活性化を抑えることが示されました。また、NMNはPARP9というタンパク質の活性化を抑制し、いわゆる”NAD+の戦場”であるウイルスと細胞の戦いにおいて、PARP9が十分なNAD+レベルを持つことでウイルスに打ち勝つことをサポートすることも示されました。これらの結果から、NMNがウイルス媒介性の炎症を軽減し、ウイルスに対する防御を助ける可能性が示唆されました。

慢性炎症は器官や組織にダメージを与え、加齢関連の疾患の基礎にもなりますが、NMNはこれを軽減する効果があることが研究で示されています。マウスを用いた実験では、NMNが免疫細胞から分泌される炎症性タンパク質を減少させたり、炎症性腸疾患や肥満関連の炎症を軽減する効果も見られました。また、肺の損傷に対してもNMNがIL-6などの炎症性タンパク質の減少を促すことが確認されています。最近の研究では、敗血症と呼ばれる過剰な免疫反応による全身的な炎症に対してもNMNが脳の炎症を抑える効果が報告されています。これらの結果から、NMNは広範な加齢関連の状態において炎症を軽減し、抗炎症の抗老化化合物としての役割をサポートしていると考えられます。

研究者らは、「この研究結果は、NMNは加齢に関連した様々な症状において炎症を緩和し、抗炎症性抗老化化合物としての役割を裏付けている」としました。

 

 

Sano, H., Kratz, A., Nishino, T., Imamura, H., Yoshida, Y., Shimizu, N., Kitano, H., & Yachie, A. (2023). Nicotinamide mononucleotide (NMN) alleviates the poly(I:C)-induced inflammatory response in human primary cell cultures. Scientific Reports13(1), 1-12. https://doi.org/10.1038/s41598-023-38762-x

 

 

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NMNが乳がんの増殖と転移を抑制させる

2023.1.25

 

日本においても乳がんの罹患率と死亡率は、年々増加傾向にあり、50年前は50人に1人だったのが、2021年予測で94,400人となっており、がんの中で最も多くなっています。乳がんでの死亡数も2021年は14,908人であったことが報告されています。

 

出典:厚生労働省. 2021年人口動態統計月報年計(概数)の概況. p13 図8 悪性新生物<腫瘍>の主な部位別にみた死亡率(人口 10 万対)の年次推移

 

世界的にみても、乳がんの罹患率と死亡率は、日本と同様の傾向があることが分かっています。中でも、乳がん全体の約20%を占めるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、3年以内の再発率が非常に高く、再発後の生存期間が他のタイプの乳がんに比べ短い乳がんとされています。TNBCは、乳がんの治療で一般的に用いられるホルモン療法や分子標的薬のハーセプチン療法の効果がなく、現在のところ、効果が期待できる薬剤が抗がん剤を用いた化学療法のみに限られていることも特徴です。

 

この度、中国清華大学のLuo教授らは、「Oncogene」誌に、NMNがマウスにおけるTNBC腫瘍の増殖と転移を抑制し、生存確率を向上させることを発表しました。

 

教授らは、免疫不全のマウスにヒトTNBC細胞を注入し、1日500mg/kgのNMNを投与し、腫瘍の体積を計測したところ、腫瘍細胞注入後48日目に、NMNを投与したマウスはは、NMNを投与していない腫瘍を持つマウスと比較して腫瘍体積を10%以上減少させ、さらに、肺組織での腫瘍の成長と広がりを半分に減らしたということから、NMNがTNBC腫瘍の成長を著しく遅らせ、他の組織への転移を大幅に制限することを裏付ける結果となったとしています。

 

NMN摂取によりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の濃度が高まることにより、長寿遺伝子ともよばれるサーチュイン1(Sirt1)が活性化し、DNAの修復や活性酸素を除去する働きがあることは、老化研究で一番有名でよく研究されています。

教授らはこれに着目し、さらなる研究において、NMNはNAD+の濃度を高め、Sirt1の働きを増強することで、がんの増殖や転移を遅らせている可能性が高いことを示唆しているとしました。しかしながら、研究では、投与量によりNMNの抗がん作用を十分に発揮することができないケースがあったことも言及しており、NMNの抗がん作用は投与量に依存する可能性があるとしています。

 

とは言え、これらの知見がヒトに応用されれば、TNBCの増殖と転移を抑制する新たな方法への希望に繋がるものと期待されることは確かでしょう。

 

【出典】

Jiang Y, Luo Z, Gong Y, Fu Y, Luo Y. NAD+ supplementation limits triple-negative breast cancer metastasis via SIRT1-P66Shc signaling. Oncogene. 2023 Jan 23. doi: 10.1038/s41388-023-02592-y. Epub ahead of print. PMID: 36690678.

 

 

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